総合評価(Holistic Review)とは。 アメリカ大学が 何をどれだけ見るか
NACAC 185 校の数字・MIT と Cornell の評価項目・2023 年以降に変わったこと・大学が公式に書いている観点
「点数だけでは決まらない」は本当だが、何がどれだけ効くかは大学が公表している。全米調査の割合と、難関校が Common Data Set で公開する評価項目を並べ、2023 年の判決以降に変わったルールまで整理する。
情報の基準日: 2026年9月27日。NACAC は 2023 年秋の調査、Common Data Set は 2024-25 年版
結論を先に
全米の 4 年制大学が「かなり重要」とする割合は、高校の成績 76.8%、カリキュラムの厳しさ 63.8%、人物 28.3%、エッセイ 18.9%、志望度 15.7%、推薦状 11〜12%、課外活動 6.5%、テスト 4.9%(NACAC、2023 年秋、185 校)。
選抜性の高い大学は別。MIT の Common Data Set では成績・テスト・エッセイ・推薦状・課外活動・才能・人物のすべてが「非常に重要」。Cornell も同じで、テストだけが「考慮」。
2023 年 6 月の最高裁判決で人種を考慮する入試は違憲に。レガシー(卒業生の子)優遇はコロラド・バージニア・イリノイ(公立)、メリーランド、カリフォルニア(私立含む、2025 年 9 月〜)で州法により禁止。
テストを「かなり重要」とする大学は 2018 年の 46% から 4.9% に減った。一方で Harvard・Yale・Dartmouth・Brown・MIT・Stanford などは 2024〜26 年に SAT/ACT を再び必須にした。大学ごとに正反対。
Harvard は「成長と潜在力・関心と活動・人柄・コミュニティへの貢献」、MIT は「志願者と MIT の合致(match)」を公式に評価の観点として書いている。点数化の公式は公開されていない。
自分はどこから読むか。不安な人・難関校志望・保護者で違う
大半の大学は成績で決める。総合評価が効くのは合格率の低い大学
「点数で決まらない」と聞いて不安な高校生
- 大半の大学は成績とカリキュラムで決めている。NACAC の調査で「かなり重要」の 1 位は高校の成績(76.8%)、2 位はカリキュラムの厳しさ(63.8%)。課外活動をかなり重要とする大学は 6.5% しかない。
- 総合評価が本当に効くのは合格率の低い一部の大学。そこでは成績が良い出願者が定員の何倍もいるので、エッセイ・推薦状・活動・人物で選ぶ。
- テストの扱いは大学で正反対。SAT 必須に戻した難関校と、テストを見ない大学が併存する。志望校ごとに確認する。
難関校を目指す人
- MIT と Cornell の Common Data Set では、成績・エッセイ・推薦状・課外活動・才能・人物が「非常に重要」。つまり全部見る。弱い項目を他で補う仕組みではなく、全部そろっている人から選ぶ仕組み。
- Harvard は「時間をかけて取り組み、成長した人」を探すと書いている。活動の数より、続けた期間と変化が見られる。
- 2023 年の判決で人種は考慮できなくなったが、エッセイで自分の経験を書くことは禁じられていない。国籍や地域は多くの大学で「考慮」の項目に残る。
保護者
- 「面接で決まる」「寄付で入れる」は例外。面接をかなり重要とする大学は 4.3%。レガシー優遇は 5 州で禁止され、カリフォルニアは 2025 年 9 月から私立も対象になった。
- 留学生は多くの大学で学資援助の申請が合否に影響する(need-aware)。援助が要るなら、留学生にも家計を問わない大学を先に調べる。
- 評価の公式は公開されない。「合格者の平均 GPA」は結果であって基準ではないので、それだけで判断しない。
何をどれだけ見るか。185 校が「かなり重要」とした割合
NACAC の 2023 年秋の調査。4 年制大学 185 校の回答
| 要因 | かなり重要 | ある程度重要 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 高校の成績(大学進学向け科目) | 76.8% | 15.1% | 2012 年以降ずっと 1 位 |
| 高校の成績(全科目) | 74.1% | 18.9% | ― |
| カリキュラムの厳しさ | 63.8% | 22.7% | AP・IB・上級科目をどれだけ取ったか |
| 人物・性格 | 28.3% | 37.5% | 推薦状とエッセイから読む |
| エッセイ | 18.9% | 37.3% | 私立の方が重い |
| 志望度(Demonstrated Interest) | 15.7% | 27.6% | MIT・Cornell は「考慮」 |
| カウンセラー推薦状 | 11.9% | 40.0% | ― |
| 教員推薦状 | 10.8% | 40.5% | ― |
| 課外活動 | 6.5% | 44.3% | 「ある程度重要」まで含めると半数 |
| クラス順位 | 5.5% | 22.4% | 順位を出さない高校が増えた |
| SAT・ACT | 4.9% | 25.4% | 2018 年は 46%。難関校は必須に戻す動き |
| ポートフォリオ | 4.9% | 10.8% | 美術・音楽系 |
| 面接 | 4.3% | 8.6% | 54.6% は「重視しない」 |
| 就労経験 | 2.2% | 30.8% | ― |
成績とカリキュラムが 2012 年以降ずっと上位で、テストだけが大きく動いた。2018 年に 46% の大学がテストを「かなり重要」としていたが、2023 年秋は 4.9%。この調査は全米の 4 年制大学の平均なので、合格率の低い大学の実態は次の Common Data Set で見る。
難関校の評価項目。MIT と Cornell の Common Data Set
各大学が毎年公表する C7 欄。4 段階で何を見るかが分かる
| 項目 | MIT | Cornell |
|---|---|---|
| カリキュラムの厳しさ | 非常に重要 | 非常に重要 |
| GPA | 非常に重要 | 重要 |
| SAT・ACT | 非常に重要(必須) | 考慮 |
| エッセイ | 非常に重要 | 非常に重要 |
| 推薦状 | 非常に重要 | 非常に重要 |
| 課外活動 | 非常に重要 | 非常に重要 |
| 才能・能力 | 非常に重要 | 非常に重要 |
| 人物・性格 | 非常に重要 | 非常に重要 |
| 面接 | 考慮 | 考慮 |
| 志望度 | 考慮 | ―(記載なし) |
| 卒業生の子(レガシー) | 考慮 | 考慮 |
| 居住地・州 | 考慮 | 考慮 |
| 宗教 | 考慮しない | 考慮しない |
難関校では、全米調査で 6.5% だった課外活動が「非常に重要」になり、エッセイ・推薦状・人物も同格になる。成績が良い出願者が定員の何倍もいるので、それ以外で選ぶしかないからだ。テストは MIT が必須で「非常に重要」、Cornell は「考慮」と、同じ難関校でも分かれる。
関連SAT・ACT を必須に戻した大学の一覧と目標スコア2023 年以降に変わったこと。人種・レガシー・テスト
判決と州法でルールが動いた。古い解説はここが違う
人種を考慮する入試が違憲に
最高裁が SFFA 対 Harvard・UNC 事件で、人種を要素として考慮する入試を憲法違反と判断。エッセイで個人の経験として書くことは判決も認めている。
テストを「かなり重要」とする大学が 4.9% に
NACAC の調査。2018 年の 46% から急減。テスト任意(test-optional)が全米の標準になった。
難関校が SAT/ACT を必須に戻し始める
Dartmouth、Yale、Brown、Harvard、MIT、Stanford などが 2024〜26 年入学から必須に。全米の流れと逆で、大学ごとに確認が要る。
レガシー優遇を禁じる州法
コロラド(2021 年、公立)、バージニア・イリノイ(2024 年、公立)、メリーランド(2024 年、私立も)、カリフォルニア(AB 1780、2025 年 9 月施行、私立も。2026 年秋入学から)。
出願者数の増加と留学生の減少
米国の大学への出願は増え続ける一方、2025 年秋の留学生の新規入学は 17% 減(IIE)。留学生枠の競争環境は大学と国で違う。
大学が公式に書いている観点。Harvard・MIT・Common Data Set
点数化の公式は公開されない。公開されているのは観点
| Harvard College | 「入学の公式はない」としたうえで、成長と潜在力(時間をかけて取り組み、どう成長したか)、関心と活動(何に打ち込み、何を成し遂げたか)、人柄(誠実さ、成熟、他者への配慮)、コミュニティへの貢献の 4 つの観点を挙げる。推薦状は人柄と逆境を乗り越えた経験を知るために使うと明記 |
|---|---|
| MIT | 「志願者と MIT の合致(match)が選抜を動かす」。求めるのは協働、主体性、リスクを取る姿勢、手を動かす創造性、知的好奇心。活動は「量より質」「今本当に大事にしている少数のことに心を注ぐ」。「それ自体で MIT に入れる活動は何ひとつない」 |
| Common Data Set の C7 欄 | 各大学が毎年、成績・テスト・エッセイ・推薦状・面接・課外活動・才能・人物・レガシー・居住地・志望度などを「非常に重要/重要/考慮/考慮しない」の 4 段階で公表する。志望校名+ Common Data Set で検索すれば、その大学が何を見るかの一次資料になる |
| NACAC | 全米の 4 年制大学に毎年調査し、要因ごとの重要度を公表する。難関校だけでなく全体の傾向を見るための資料 |
日本の高校生に効く準備。7 項目
上の表の重み順に、日本の高校で何をするか
| 成績 | 日本の高校の評定がそのまま最重要項目。1 年から 3 年 1 学期までの全科目。上位校は学校で取れる最も難しい科目を取っているかも見る |
|---|---|
| テスト | 志望校が必須か任意かを毎年確認する。必須校に出すなら SAT/ACT は避けられない。任意校でも高スコアは提出できる |
| 英語 | TOEFL の新スコア(1〜6)で難関校は 5.0(旧 100 点)前後。IELTS なら 7.0 |
| エッセイ | Common App の本文は 250〜650 語。テーマは 2025-26 年も変わっていない。書くのは実績の列挙ではなく、自分の経験と考え |
| 推薦状 | 担任と教科担当の教員から。人物と逆境の経験を書いてもらう資料なので、書ける関係を 1 年生から作る |
| 活動 | 数ではなく、続けた期間と変化。部活・生徒会・家業の手伝い・家族の世話も Common App の活動欄に書ける |
| 志望度 | MIT・Cornell は「考慮」、全体では 15.7% が「かなり重要」。追加エッセイの「なぜこの大学か」に具体的に答えることが志望度の示し方になる |
よくある質問
8 問。回答は2026年9月27日時点
総合評価(Holistic Review)とは何ですか?
成績とテストの点数だけでなく、カリキュラムの厳しさ、エッセイ、推薦状、課外活動、人物などを合わせて合否を決める方式。NACAC の 2023 年秋の調査では、4 年制 185 校の 76.8% が高校の成績を「かなり重要」とし、エッセイは 18.9%、課外活動は 6.5%、テストは 4.9%。大半の大学では成績が軸で、難関校ほど他の項目の比重が上がる。
アメリカの大学は成績とテストのどちらを重視しますか?
成績。テストを「かなり重要」とする大学は 4.9%(2023 年秋)で、2018 年の 46% から減った。ただし MIT のように SAT/ACT を必須にして「非常に重要」と公表する難関校もある。志望校の方針を確認する。
課外活動はどれくらい重要ですか?
全体では「かなり重要」が 6.5%、「ある程度重要」を含めて約半数。MIT と Cornell の Common Data Set では「非常に重要」。難関校ほど重い。Harvard は活動の数より、時間をかけて取り組み成長したかを見ると書いている。
人種や国籍は考慮されますか?
人種は 2023 年 6 月の最高裁判決で考慮が禁止された。国籍や居住地は多くの大学が「考慮」の項目に残している(MIT・Cornell とも)。エッセイで自分の経験として文化的背景を書くことは判決も認めている。
レガシー(卒業生の子)は有利ですか?
MIT と Cornell の Common Data Set では「考慮」。コロラド、バージニア、イリノイ(いずれも公立)、メリーランド(私立も)、カリフォルニア(私立も、2025 年 9 月施行)では州法で禁止された。日本からの出願者にはほぼ関係しない。
面接はありますか?重要ですか?
卒業生による面接を行う大学はあるが、「かなり重要」とする大学は 4.3% で、54.6% は重視しない。MIT・Cornell は「考慮」。面接の有無で合否が決まる大学は少ない。
大学が何を見るかを自分で調べる方法は?
志望校名と Common Data Set で検索し、C7 欄を見る。各大学が要因ごとに「非常に重要/重要/考慮/考慮しない」を毎年公表している。Harvard や MIT のように評価の観点を文章で公開している大学もある。
留学生は不利ですか?
審査の項目は同じ。違いは学資援助で、多くの大学は留学生の援助申請を合否の判断に含める(need-aware)。留学生にも家計を問わない大学は Harvard、Yale、Princeton、MIT、Amherst、Bowdoin、Dartmouth など少数。テストは必須校が増えているので、留学生も SAT/ACT の準備が要る大学が多い。
References
参照元
-
01
NACAC - State of College Admission: Factors in the Admission Decision Fact Sheet(2023 年秋) 185 校の要因別の重要度と 2012 年からの推移
- 02
-
03
Cornell University - Common Data Set 2024-2025(C7) Cornell の評価項目
-
04
Harvard College - Admissions 評価の 4 つの観点
-
05
MIT Admissions - What We Look For 合致(match)、量より質
-
06
MIT Admissions - Applying Sideways 「それ自体で入れる活動はない」
- 07
-
08
California Legislature - AB 1780 Legacy and donor preference in admissions 私立を含むレガシー・寄付者優遇の禁止(2025 年 9 月施行)
-
09
Common App - Essay Prompts 250〜650 語
※ 2026年9月27日 時点の情報。最新は各公式サイトでご確認ください。
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